10代の終わりの頃です。
田舎から上京したわたしは、週末の救世軍バザーにかよっていました。
浪人生、大学生と仕送りはすくなく、100円、200円の古着を買っていました。
あるとき、めずらしく地元の友人といっしょに行ったことがあります。
救世軍バザーでは、ワゴンの中に衣類が山と積まれていました。
そこで友人が買ったのが、イヴ・サン=ローランの黒いスカートでした。
友人は、しばらくしてサイズが合わなくなったから、とわたしにその黒いスカートをくれたのです。
イヴ・サン=ローランのスカートの裏
結婚して、出産したころだったでしょうか。
すっかりタンスの肥やし状態になっていた、その黒いスカートを処分することにしました。
そのころのわたしの頭の中には、リメイクとかハンドメイドとかがぐるぐるしていました。
いつも中途半端におわってるくせに、「なにかにつかえそう」といらなくなった洋服を切りとっていたのです。
イヴ・サン=ローランの黒いスカートも、わたしの魔の手にかかった1枚でした。
だって、イヴ・サン=ローランだからね。ワクワク
そして断ち切りバサミでサクサクと切っていったわたしは、目を見張りました。
スカートのファスナーに見つけたのがさいしょだったでしょうか。
玉止めがしてあるのです。
ミシンの縫いはじめと縫いおわりに、玉止めです。
あっちもこっちも、きちんと玉止め。
玉止めをした糸のはじは、みじかく切ってありました。
これには、さすがイヴ・サン=ローラン! と思わざるをえませんでした。
高級ブランドはちがう、こういうところがちがうんだ、といたく感心しました。
ひとつのスカートにたいして、いくつの玉止めを必要とするでしょうか?
職人技で手早くできるのかもしれませんが、それにしても手作業ですよね。まさか。
これは、それ相応の値段だとしてもむりはない。
糸の端がきちんと玉止めされているのを見て、つくづくそう思いました。
わたしが玉止めをしていたのなんて、高校の家庭科までです。
自分でなにか縫うにしても、ミシンだったらダダダダッと返し縫いをしておしまいです。
こういうところ、見えないこういうところが大事なんだよねぇ。
だれに見えるわけではないが、きっちりと玉止めをして、糸のしまつをする。
見えないんですけどね。
見えない部分こそ、きちんと仕上げておく。
うらを見たときに幻滅するんじゃなくて、感動する。
そういうふうにありたいですなぁ、と。
ではまたー。
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