世代がちがうからよ、といわれたことがあります。
その場にそろったのは、60代、50代、40代、30代の主婦です。
わたしは当時30代の主婦でした。
その60代の女性は、ご主人が定年退職したばかり、九州男児のご主人をずっと支えてきました。
ご主人の単身赴任中、子育てに明け暮れていた女性は、パジャマを着て寝たことがなかったそうです。
いつもジャージを着て、なにがあってもすぐに飛び出せるようにしていたのだ、と。
ホームドラマみたいですね
外見はすらりと背が高く、かっこいい60代の女性です。
世話好きで、アネゴ肌。
「でも、気が小さいのよゥ~」とよくいってました。
そんな60代の女性ですが、バブル期には出張や接待の多いご主人を支えつづけていました。
もちろん、専業主婦です。
女性は毎朝、ご主人のために3着のスーツを用意したそうです。
3着のスーツにあわせて、3本のネクタイ。
そして、どのスーツを選んだ場合にも合うように、玄関には3足の靴。
この話を聞いたとき、わたしをふくむ30代主婦は「えー、すごーい」「まるでホームドラマに出てくる奥さんみたいじゃないですか」と口々にいいました。
いや、もちろん、いまだってそのようにきちんとして、ご主人を会社という戦場に送り出す奥様はいるはずです。
まさしく企業戦士、家を出れば7人の敵。
すきのない着こなしで、夫を家から送り出すのが妻のつとめですよねー、ねー、ねー。
もう、あまりにりっぱな主婦の鏡なものですから、30代主婦たちは尊敬のまなざしですよ。
バブル期のゴディバチョコ
バブル期、女性のご主人は、お店のおねーちゃんにもらったというゴディバのチョコ、それも大きな2段の箱入りを持ち帰ったそうです。
女性いわく「たかーい、チョコなのよ~」
そういって、娘たちにチョコを食べさせたそうです。
それなりにみついでいなければ、これだけのチョコをもらえるはずがない、という意味でした。
そのころには、ご主人に小指で表現される存在があったのだとかー。
あらあら、ですよ。
娘たち
そんなモーレツ企業戦士だった父親、そしてかいがいしくつくす母親を見て育ったという娘さんたちは、父親と真逆の男性を選んだそうです。
「ありゃあ、出世しねぇなァ」とご主人。
ですが、奥様である女性は「生まれ変わって結婚するなら、婿くんみたいな人がいいわ~」と絶賛です。
娘さんたちは、話の場に居合わせた30代主婦連と同世代です。
女性が電話口で「夕飯なに?」とたずねたら、娘さんは「やきそば」と答えたのだそうです。
「もォ~、お夕飯にやきそばだけって。ほんっとにもう、わたしがあれこれ、あんなにつくってたのに、まったく」
と女性はなげくのでした。
定年後のご主人
定年退職を迎えたご主人は、スーツを全部、娘婿さんにあげたそうです。
それから、家を片づけて、つかわない家具を捨てたり、娘さんのアルバムは娘さんへあげたりしたのだとか。
定年退職をして半年もたたないうちに、ご主人は精力的にそれらのことをおこなったのだそうです。
退職後すぐに、そういうことができたのは、ご主人が定年後の暮らしについて考えていたからだと思います。
サラリーマン生活の象徴であるスーツからなにから、いっさい処分したそうですから。
なかなかできることではないですよ。
夫婦二人
女性は「わたしは旦那よりも長生きして自由を満喫する」といっていました。
「でも、健康に関する本なんか読んじゃって、あっちも長生きする気満々なのよね」と不安そうな女性。
また、女性は娘たちに「親子は他人になれないけど、夫婦は別れれば他人になれるのよ」といっているのだそうです。
冗談半分、でも目は本気です。
ご主人は、奥様のそういう気持ち、ごぞんじなのだろうかー、と思います。
その女性が、ご主人に感謝し、尊敬しているのはわかります。
頼りにしているのだな、ということも伝わってきます。
でも、その女性はご主人が生きているうちは、自由を満喫できないって思っているのだなァ。
いっしょにいたら、いつも緊張状態、ご主人の言葉にびくびくしてしまう自分がいるのだ、と。
ただ、そのご主人、かっこいいらしいんです。
わたしはまだ拝顔を得ないのですが、見た人の話によると「これはしかたないな」というかっこよさだったらしいのです。
惚れた弱みなのだろうかー。
もう、惚れた腫れたのまえには、降伏するしかない、惚れたが悪いかってなことなのでしょうか。
そうか、のろけか。
まー、そんな話がえんえんと。
ではまたー。